サラエボ近郊にある世界最古のピラミッドに登ってみた話 The Story that we tried to climb to the world’s oldest pyramid in the Sarajevo suburbs. / La historia que nos trató de subir a la pirámide más antigua del mundo, en los suburbios de Sarajevo.
|スロベニア、クロアチア、そしてボスニア・ヘルツェゴビナ、モンテネグロ、セルビア、マケドニアとコソボ。これらの国々の連邦国家としてユーゴスラビア社会主義連邦共和国がかつて存在していた。第二次世界大戦後、ナチス支配下にあったこの国々が1945年に連邦国家として独立。1992年までにそれぞれの国家に分かれた。その間に数々の紛争を巻き起こしながら。
ミュンヘンを出て、オーストリア、スロベニアを通ってクロアチアに入国。首都のザグレブ郊外にあるホステルに宿泊。ヨーロッパに入って初めてのホステル。カウチサーフィンやエアビーアンドビーは楽しいけど、気を使っちゃうこともいろいろ。なんにもしないぼーっとする時間を過ごすことにした。
庭にあるプールに浸かる。空を見上げながらぽかーっと水に浮かぶ。
2泊3日、まったくホステルから出ることなくのんびりだらだらと過ごしてエナジーチャージ!そしてプリトヴィツェ湖畔国立公園、ドゥブロブニクとアドリア海沿岸の観光地を巡ってモンテネグロへ。海辺の町に一晩泊まって、ボスニア・ヘルツェゴビナの首都サラエボを目指す。
ぼくらの車にはもちろんGPSナビがあるんだけど、こいつがたまにとんでもない道に案内してくれる。今回がまさにそのパターン。車が一台ギリギリ通れる幅の崖っぷちつづらおりロードへご案内。たっぷり冷や汗かきながらの1時間弱。抜けたところに広がったのがこの風景。
ホッとしたらおなかが空いた。ふっと入った道路沿いのレストランが当たり!ウエイターのおじさんが勧めてくれた料理がラム肉のイスポッドサッチャ Ispod saca と仔牛のロロバーナ Rolovana。ロロバーナはチーズと野菜を薄切り肉で巻いて焼いたもの。
そしてイスポッドサッチャ、これは専用の鍋に入れて炭火の中に埋め込んで遠赤外線でじっくり煮込む料理。ウエイターのおじさんが見せてくれたのがこちら。
とろっとろに柔らかくなったラム肉。ラム肉の脂をたっぷり吸ったじゃがいも。ちょっと初体験の味。運転してなかったらモンテネグロワイン飲みたかったなー。
再び出発。モンテネグロやボスニア・ヘルツェゴビナにはほとんど高速道路というものがない。ひたすら一般道をすすむ。やっとボスニア・ヘルツェゴビナの首都サラエボ近郊の町、Visokoのホステルに到着。エアビーアンドビーで見つけたこのホステル、なんと看板が無い。ドアに電話番号が書いてある。困っていると近くを通ったおじさんが電話してくれた。そして現れた親子。お父さんは英語がしゃべれないが息子たちは英語を話す。どうやらここはホステルとして開業しようと工事をはじめて、やっと1階が完成したところらしい。
ここの町に『世界最古のピラミッド』と宿の息子たちが教えてくれた。「世界で一番すばらしいピラミッドなんだ」と。ネットで調べると数件の記事がヒット。信じるかどうかはあなた次第、ということで散歩がてら行ってみることに。
山頂からはエネルギービームが宇宙に向けて発射されているという話。まずは麓から山を、もとい、ピラミッドを見上げてみる。
そしておそるおそる登り始めると山肌に数件の住宅とレストランが。ビールを飲みたい気持ちをぐっとこらえてさらに上に向かって歩く。つぶれたお土産屋の外壁に飾られたポスター。さらに上に向かって歩く。家の軒先でピラミッドの形をした木の置物を並べて売っている。裸のおじさんが大きなカマを振り回しながら草を刈っている。軒先にいるおじさんに「ボスニアンピラミッド?」と山の上を指差して聞いてみると笑顔でうなずく。
とりあえず登らないことには始まらないと思って足を踏み出す。もうすでに頭の中では「ピラミッドではない」という意見が大多数を占めている。しかし、登る。登った先にあったものはこういう発掘現場のような場所。看板が立てられている。こう書いてある。
「ピラミッドだと信じて発掘したら、土の下から”明らかに人工的な”石組が出て来たのでここがピラミッドだと確信した」
その現場の写真がこちら。確かに人工的と言われれば人工的な文様なのかもしれない。
もしかしたらボスニアのピラミッドがこの先、学術的な研究を経て正式に認められるかもしれない。その時にはきっと世界中から観光客が訪れるだろう。だれもが想像するだろう、エジプトのピラミッドが出来るその遥か昔にこの場所で栄えた王国のことを。サラエボ近郊の町Visokoにある、いやこれから完成する予定のホステルの名前はその未来を見越して作られたのかもしれない。そのホステル、名前は『Kingdom』という。こちらから予約出来るのでサラエボに行かれる際にはぜひ。価格設定はかなり強気なのでご注意を。http://www.booking.com/hotel/ba/hostel-kingdom-visoko.ja.html
ヨーロッパ最悪の紛争と言われたボスニア・ヘルツェゴビナ紛争からまだ20年。ホステルのお父さんはその時代を生き抜いて来ている。そして十代の息子たちはみんなその時代を知らない。ヨーロッパの人たちでさえ「ボスニアはまだ危ないから行ったことが無い」と言う人がいるこの国に希望をもたらすのはきっとこのピラミッドじゃない。
ボスニアに入国してから走って来た道すがら、道路工事のショベルカーが仕事をしていた。崖を削って道を作る。その作業がひと段落するまで車を止めて待っていた。そこを抜けていくと湖のほとりにきれいなキャンプ場。たくさんの車が止まっていた。きっとあそこでは子供たちが楽しそうに遊んでいるんだろうなと思った。
ホステルKingdomの息子たちがお父さんの年齢になったころ、またボスニアに来てみたい。観光客で賑わっているホステルKingdomにまた泊まれたら、、、いや、やっぱりそれはいいかな。