遠き昔のワイナリー③ The Winery in Early Times no.3 / La Bodega en Los Primeros Tiempos no.3
|2015年4月18日。薄暗いぶどう畑を歩いてワイナリーへ向かう。夜明けまではまだ少し時間がある。
ぶどうは朝早いうちから収穫される。温度が冷たいままワイナリーに運び、仕込みに入るためだ。ふだんはほとんど人のいないぶどう畑に収穫期には大勢の人たちがやってくる。だんだんと熟してくるぶどうを美味しいうちに摘み取るためには一気にやってしまう必要がある。
大勢が一度に畑に入って猛スピードでぶどうを摘み取る。周辺の国からやって来た労働者や学生バイトたちでごった返す。太陽が昇ってしまう前に、ぶどうの実が温まってしまう前に、今日の収穫を終えなければならない。だから収穫期は毎日が戦争のようだといわれる。
でもそれはヨーロッパの話。チリでは家族や親戚が集まってみんなでワイワイ収穫して、そのぶどうを木箱に入れて積み込んで大きなトラックで運んでくる。お昼ご飯はおおきなテーブルを囲んでみんなで食べる。たっぷり休憩を取ったあと、また畑に戻って午後の収穫をはじめる。ぶどう畑にはのどかな時間が流れている。
そして僕らはといえば、 ぶどう畑からでっかいトラックに乗ってワイナリーに到着した2000キロのぶどうを高さ4メートルの壁に囲まれたコンクリートタンクに入れていく。 まずは、くそ重たい木箱に入ったぶどう20箱分くらいを入れて、わっせわっせと優しく足で踏みつぶし、残りのぶどうをその上からドサドサ入れていく。 「これが数週間たつと、ぶどう自体に付いている自然酵母で発酵してワインになっていくのかー」とかのんびり考えながらやれるようなやさしい作業ではなく、ガンガン持ち上げてひっくり返してただひたすら早く終われー!と願いながらやるほんまにキツい作業だった。収穫期は毎日のようにこんなことやってるのか。すごいな。 わっせわっせとがんばって踏みつぶしたおじさんふたり。ロベルトとぼく。ほっと一息ついて、目の前には骨付き肉のスープと豆のシチュー。アンヘリカが作ってくれたランチはいつも以上に元気がでるメニュー。彼女お手製の唐辛子ペーストを入れて食べる。今日もワインがすいすい入っていく。 ガッツリ体使って働いて、ガッツリ食べてガッツリ飲んで、グッスリ眠るという毎日。最初はひさしぶりすぎて悲鳴をあげた筋肉も徐々に慣れはじめてきている。
仕事が終わって、片付けしているシュンを置いて先に帰る。 ルドルフの洗濯機で洗ってもらった洗濯物を干してから、ふたりでトレスエスキーナまで買い物に出かける。日がゆっくりと傾きはじめている。たまに車が横を通っていく。でっかいチョリソーとパスタを買う。
うちに着いて大きな鍋でお湯をわかしてパスタの準備をする。今日もシュンと3人、ワインを飲みながら晩ごはん。よく食べてよく飲んで、あとは寝るだけというしあわせな時間。こういう時間はとてもここちいい。