アルゼンチン⑤フィッツロイを拝む To see Mt. Fitz Roy/ Para ver Mt. Fitz Roy

2015.4.8-9 El Calafate→El Chalten, Argentina@Lo de Trivi

2015.4.10 El Chalten→El Calafate, Argentina@Fuji Ryokan

「フィッツロイのトレッキングは絶対に行った方がいいですよ！」

「フィッツロイの日の出は、ウユニを越えました。」

南米の旅の途中、エルチャルテンに行った会う人会う人が口々にこう言った。

Mt. Fits Roy（フィッツロイ）は、アルゼンチンのパタゴニア地方にあるアンデス山脈にある山。世界のクライマーの聖地とも言われ、アウトドアブランドパタゴニアのロゴになっていることでも有名だそう。マチュピチュのスタンドバイミーロードの一件以来、すっかり自分の体力に自信が無くなった私。元々そこまでアウトドア派でもないので、フィッツロイは行かなくてもいいかな…と思っていた。だがしかし、みんなの激しいレコメンドと美しい写真を見ると、ここまで来たんだし姿だけでも拝んでみたいな〜という気になっていた。

エルカラファテの藤旅館で知り合ったLeeくんもフィッツロイに向かうということで、とりあえず行ってみることに決定。ただ、深夜発で５時間ほどの距離を歩いて朝日を見るトレッキングにチャレンジするのは、やはり気がすすまない。バスに乗ってトレッキングの拠点となるエルチャルテンの町に着くと、フィッツロイらしき山の姿が！でも、ちょうど雲に隠れていて見えない。あまりにずっと山頂が雲に隠れているため、その昔は火山と勘違いされていたとか。明日はとりあえずちょっと早起きをして、近くの展望台で日の出を見ようと決めた。

朝7時前にホステルを出発。

すでに明るくなりつつある空を見上げながら、ろくちゃんと2人きりでゆっくりとトレッキング道を歩いていく。朝日を見ようとする人たちがたくさん歩いているのかと思っていたが、人っ子一人いない。峡谷を流れる川。雪化粧をしたアンデスの山々。展望台までの道のりから見える景色の美しさに何度も立ち止まってしまう。少しづつ空が赤みを帯びてくる。これはちょっと間に合わないかもと早足で歩き始める私たち。

空は晴れているものの、大きな雲に阻まれてフィッツロイが赤くなることは残念ながらない。それでも、展望台から見る山々は美しかった。ただ、どうしてもわずかな雲がフィッツロイにまとわりついて、その全貌をみせてはくれない。

しばらく展望台で待つものの、途中で諦め、近くのカプリ湖をまわって宿に戻るルートを行くことに。

カプリ湖は大きく、風がなければ湖面に写るフィッツロイが美しい場所。今日は残念ながら風がけっこう吹いている。ただ、その風のおかげでフィッツロイのまわりの雲がどんどん流れて行く。ここでもうしばらく待っていれば、フィッツロイが姿を見せてくれるかもしれないと湖畔でしばし待つ私たち。すると、遠くから見知った顔がちらほら。前日までエルカラファテの藤旅館で一緒だった韓国の旅人達だ。彼らもフィッツロイを見にきたという。５時間のトレッキングは諦めた者同士、再会を喜びつつ雲が晴れるのを一緒に待った。

雲は次から次へとあらわれる。風は強く、雲もどんどん流れて行くのだが、もうそろそろ見えそう！という頃になると不思議と新たな雲がフィッツロイの山頂あたりにまとわりついてくる。

かれこれ30分は焦らされただろうか。ふとフィッツロイの後ろにあった雲が消えた。これはいけるかも！！寒さの中、最後のわずかな雲がフィッツロイから離れるのを願ってじっと待つ。

見えた！！！

ようやく、フィッツロイがその全貌をあらわしてくれた。

鋭く尖った山頂。雪を柔らかに身にまとっている。ただただ、美しかった。

待って、まって、待って。ようやく見えたフィッツロイは、旅人達が絶賛したように朝日で赤くもなかったし黄金色に輝いてもなかったけど、それでも美しかった。闇に包まれた深夜から５時間のトレッキングを頑張った末に見えるフィッツロイには、きっと到底敵わない。それでもやっぱり、ここに来て良かったと素直に思える光景だった。ただそこにある山を眺めているだけなのに、風と雲と太陽が作るくるくると変わる表情に飽きることはなかった。2人きりで展望台からフィッツロイを見たことも、最後にみんなでフィッツロイの姿を拝めたことも。その時間が心地良かった。しばしの写真撮影のあと、またすぐに雲がどこからともなく現れ、フィッツロイの姿を隠してしまった。

エルカラファテまで来て、エルチャルテンに行ってフィッツロイを見るかどうか悩んでいる人がもしいるなら、私もきっと言うと思う。

「フィッツロイは見に行った方がいいよ。1時間コースのルートでもいいから（笑）」

Hanae(^ ^)